急速に進化する中東のデジタル資産エコシステムの中心にあるのが、国際金融センター「ADGM」のアブダビ、「VARA」があるドバイを擁するUAEだ。中東は、日本からは少し縁遠く感じられるエリアではあるが、透明で明確なルールや豊富な資金があり、既に世界的な大手プレーヤーが集結。日本のスタートアップが進出し始めるなど、日本企業にとっても投資・事業開発の“新たな金融フロンティア”となりつつある。

日本のWeb3ビジネスを加速させる一助となることを目指すN.Avenue clubは、2026年2月のラウンドテーブルで中東にフォーカス。その成長機会を徹底議論するため、ADGMにおいて新興技術を管掌するヘッドのほか、現地でビジネスを展開している日本発スタートアップの代表を迎え、具体的なビジネス機会の所在を深掘りした。

N.Avenue clubは国内外のゲスト講師を招いた月1回の「ラウンドテーブル(研究会)」や、会員企業と関連スタートアップや有識者との交流を促す「ギャザリング」などを開催しているが、ラウンドテーブルは会員限定のイベントのため、その一部を以下にレポートする。

ADGM フェドートフ氏:他国の規制当局とADGMが一線を画す理由

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冒頭のブリーフィングセッションでは、ADGMでHead of Emerging Technologiesを務めるドミトリー・フェドートフ氏がオンラインで登壇。ADGMはアブダビに設立された国際金融センター兼経済特区で、金融規制当局でもある。とはいえ、多くの国・地域の規制当局にありがちな「制約ありきの規制」ではなく、イノベーションを促進しつつ投資家を保護する「原則ベース」のアプローチを採用してる点が特徴だ。

フェドートフ氏は、ADGMの取り組みや中東でクリプトの保有率が高い理由などについて解説したうえで、日本企業は中東の中でもアブダビにこそ注目すべきと主張。理由としてキャピタル(資金力)、ポリシー(政策の透明性)、エグゼキューション(実行力)を挙げ、進出の検討を呼び掛けていた。

Laser Digital 岩崎氏:TradFi出身者からみた中東市場の魅力

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メインセッションで最初にプレゼンしたのは、野村ホールディングス傘下で、ドバイに拠点を構えるLaser Digitalの岩崎友平氏(Strategy Lead)。同社はADGM、VARAの両方からライセンスを取得、トレーディングやトレジャリーマネジメント、ファンド組成・管理、新規ビジネスのインキュベーションなどを提供している。

野村證券出身の岩崎氏はドバイからオンラインで出演、「TradFi出身者からみた中東市場の魅力」について、地理的・時差的な優位性、政府系ファンドの関与が積極的、他の法域と比べて規制が明確でグローバル企業が多く進出、税制が有利で優れた人材が集まっていることなどをあげた。

Bitgrit 向縄氏:Hub71の強力な支援受け、目指すAI資産の主権化

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会場でメインセッションに登壇したのは、アブダビ在住で一時帰国中のBitgrit 向縄嘉律哉氏(CEO)。かつてキヤノンで知的財産管理をしていた向縄氏は、発明者・エンジニアが報われる仕組みをつくるべく起業、AI資産の主権化を掲げて事業に取り組んでいる。

向縄氏は、中東の魅力や特徴について説明したほか、2021年、日系企業として初めて選出されたというスタートアップのエコシステム「Hub71」の魅力についても詳しく解説。Hub71は毎年数千件の応募がある人気のプログラムで、採択されると3000万円相当のサポートが受けられたり、オフィスが無料で利用できると説明した。

日本のコンテンツを中東×Web3と掛け合わせる方法

ラウンドテーブルの後半は、参加者全員がいくつかのテーブルに分かれディスカッション。テーマは「中東市場において、どのようなビジネス機会が存在するか?」と「日本のコンテンツを『中東×Web3』と掛け合わせ、どのようにグローバル展開するか?」で、向縄氏も参加した。

ディスカッション後、各テーブルの代表者が話し合った内容を発表。「金融都市といえばシンガポールやロンドンだったのが、中東がそうなるのでは」「セキュリティ関連のビジネスに芽があるのではないか」といった意見が出ていた。

また日本発のコンテンツに関連して、「すでに世界的に注目されているIPよりも、新しいIPや無名のIPの人気に中東で火を付けられたら面白い」「スポーツベッティングや今Web3で流行しているプレディクションマーケットに日本のIPをからめるのはどうか」といった提案もあった。

N.Avenue club事務局は、Web3ビジネスに携わっている、または関心のある企業関係者、ビジネスパーソンへの参加を呼び掛けている。

|文:瑞澤 圭
|編集:NADA NEWS編集部
|写真:多田圭佑