日本政府は2月20日、高市首相の下、減税・過去最大の歳出・赤字国債の同時進行という枠組みを正式化する形で、3本の主要財政関連法案を国会に提出した。
このパッケージは、ビットコインや暗号資産市場にとって短期的なリスクと長期的な影響の両方を孕む。
2026年度予算は歳出総額122兆3000億円(7930億ドル)で、2年連続の過去最高額となる。税収見込みは83兆7000億円。差額は新規国債発行29兆6000億円で賄う。
政府はまた、税制改革法案も提出した。同法案は所得税の課税最低限を160万円から178万円に引き上げる。住宅ローン減税の延長、車両取得税の廃止も盛り込まれる。これらにより国・地方税収は年7000億円程度減少する見通しである。
3本目の法案は特例公債法の期限を2026年から5年間延長するもの。財政法は赤字国債の発行を原則禁止しており、建設国債のみ認めている。しかしこの特例は数十年にわたり繰り返し延長されてきた。今回も合法的な借入構造を維持する狙い。
これら3法案の共通項は明白だ。国債費が31兆3000億円で初の30兆円超となる一方、減税で税収はさらに減少。日本の国の債務残高はすでにGDP比約250%で先進国中最悪。
暗号資産トレーダーにとって、当面の懸念は明確である。この財政拡大は日本銀行(BOJ)に利上げ圧力をかける。
元日銀審議委員の足立正司氏は2月16日、4月の利上げを正当化するのに十分なデータが集まる可能性が高いと述べた。みずほ証券グローバルマーケッツ共同責任者は、2026年に最大3回の利上げ、早ければ3月にも開始の可能性があるとロイターに語った。現在、市場は4月までの利上げを約80%の確率で織り込む。
日銀の利上げとビットコイン下落の連動は広く確認されてきた。BTCは2024年3月の利上げ後に約23%、2024年7月に26%、2025年1月に31%下落した。メカニズムは円キャリートレードにある。利上げで円高になると、安い円で組まれたレバレッジポジションが一気に巻き戻される。暗号資産は24時間取引と高いレバレッジのため衝撃を最も早く吸収する。
BTCは現在6万7000ドル前後で推移し、2025年10月の過去最高値12万6198ドルから47%超下落。米国ビットコインETF保有者の平均取得価格は8万4000ドル付近で、2026年はETFが売り越しに転じている。追加利上げはこの圧力を強める可能性がある。
ただし、2025年12月の0.75%への利上げは限定的な影響にとどまった。市場で既に織り込まれており、投機的ポジションは現在円ロングが多い。2024年8月の急激な巻き戻しの再現は必ずしも起きないとの見方もある。
目先の利上げリスク以上に、この財政パッケージはビットコインを巡る構造的なナラティブを強化している。世界最悪水準の債務国である日本が同時に減税と歳出拡大を進め、いずれも国債発行でまかなう構図。
東京証券取引所上場のメタプラネットはこの論点の体現者である。3万5000BTC(約30億ドル)を保有し、2026年には10万BTCを目指す同社は、減価する円で優先株による調達を行い、ビットコインを積み増してきた。減価通貨での資金調達による限界的資産への投資という、日本の財政経路を逆手に取った仕組み。
ビットコインにとって、日本の財政拡大にはパラドックスがある。短期的には日銀の引締め圧力を生み、キャリートレード由来の売り浴びせを招く。しかし長期的には、こうした財政経路自体が国債の信認低下を招き、通貨減価ヘッジ資産としてのBTCの地位を高める。
注目すべき変数は、3月の春闘賃上げ結果、4月の日銀の政策判断、そして現在2.14%まで低下した10年国債利回りが再び3%台へ上昇するかどうか。


