暗号資産取引所Gemini(ジェミニ)は5日、英国、EU、オーストラリアの3地域から撤退し、予測市場への集中戦略を発表した。同社は「ジェミニ2.0」と題したブログで、従業員の25%削減と米国市場への集約を明言した。2025年12月に開始した予測市場プラットフォーム「ジェミニ・プレディクションズ」の強化に舵を切る。
ジェミニは2015年の創業以来、60カ国以上に事業を拡大してきた。しかし今回の発表で、英国、EU、オーストラリア市場での事業継続を断念した背景には、複雑化する規制対応の負担がある。各地域で異なる規制要件への対応、法務・コンプライアンス体制の維持、顧客サポートの多言語化などが、経営資源を圧迫していたという。
同社は従業員数を2022年の約1100人から2025年末までに約半分に削減しており、今回さらに25%の追加削減を実施する。この人員削減の背景には、AIによる業務効率化の進展がある。ジェミニはAI活用により「小さく、速く、鋭い組織」への転換が可能になったと説明している。
海外市場からの撤退は、このスリム化戦略において不可欠な判断だった。同社は「組織が引き伸ばされ、コスト構造が重くなり、意思決定と実行のスピードが落ちている」状態に陥っていたと認めている。米国市場への集中により、規制対応の効率化と意思決定の迅速化を図る。
ジェミニの戦略転換で最も注目されるのが、予測市場への集中だ。同社は「予測市場は、今日の資本市場と同じか、それ以上に大きくなる可能性がある」と強調している。
2025年12月中旬に立ち上げた「ジェミニ・プレディクションズ」は、わずか数週間で1万人以上のユーザーを獲得し、取引総額は2400万ドル(約38億円)を超えた。予測市場は、選挙、経済指標、スポーツなどの将来の出来事について取引を行い、その価格が集合知としての確率を示す仕組みだ。
キャンペーンを積極的に行っているGemini Predictionsこの分野では、ポリマーケット(Polymarket)やカルシ(Kalshi)といった競合が急成長している。1月のデータでは、カルシが月間91.6億ドル、ポリマーケットが76.6億ドルの取引高を記録した。コインベースも1月28日に米国で予測市場プラットフォームを開始するなど、大手取引所の参入が相次いでいる。
ジェミニは、米国市場において予測市場を中核としたスーパーアプリ構想を推進する。地域撤退により確保した経営資源を投入し、規制対応力とスピードを武器に競合他社に対抗する姿勢だ。
予測市場への関心は暗号資産業界全体で高まっている。2026年1月の予測市場全体の取引高は120億ドルを超え、2024年初頭の1億ドル未満から急拡大した。
ただし規制面での課題も残る。米ネバダ州はポリマーケットとコインベースに対し、スポーツ関連契約が州法に違反する可能性があるとして法的措置を講じた。各州の賭博規制と連邦商品先物取引委員会(CFTC)の管轄の狭間で、予測市場の法的位置づけは不透明な状況が続いている。
ジェミニはブログで「予測市場で成功するためには、集中が必要だ」と明言している。グローバル展開から米国集中への転換は、次世代の金融インフラを巡る競争において、同社が選択した生き残り戦略といえる。2026年の中間選挙を控え、予測市場の成長は加速する見込みで、業界再編の動きが注目される。

